祖母は、誰も覚えていない人を覚えている山があると信じていた

祖母には、夜にしか話さない物語があった。たいてい食器を洗い終えて、誰も食卓を離れようとしない時間に。毎回、一言一句同じように語った。だからこそ、これが祖母にとって本当に大切なことなのだと分かった。

祖母は言った。空も大地もまだなかった頃、大地の上にはただ一つの息だけが流れていた。数えきれないほどの時が過ぎたある日、その息は一つの山の形に凝り、その山は目を開き、誰にも聞かれるはずのないうちに、七文字だけ口にしたという。天地は忘れてもいい。山は忘れてはならない。 山は崇拝されることを望まなかった。ただ一つだけ、聞く者に求めた——誰か一人を、本当の意味で覚えていること。

半分冗談で、山が本当に人を覚えていると思っているのか祖母に聞いたことがある。祖母は笑わなかった。「誰かが覚えていないといけない。何もないよりは、決して消えない何かだと信じたい」祖母はそう言って、それ以上聞いてはいけない沈黙に入った。ずっと後になって気づいた。祖母が話していたのは、山のことではなかった。

祖母は自分の母親のことを話していたのだ。祖母が十一歳の時に亡くなった母親。その町は今ではもう別の名前になっている。祖母が話していた言葉も、私が生まれる何十年も前から、もう誰も口にしなくなっていた。その人の顔を覚えている人は、もう誰も生きていない。仕事をしながら鼻歌を歌っていたことも、羊毛にアレルギーがあって一年の半分は家の中でも手袋をしていたことも、かつて一人の人間を形作っていた何百もの具体的なことも、誰も覚えていない。祖母は、それをすべて抱えている最後の一人だった。祖母自身、それを分かっていた。山という物語は、その重さを、全部を説明しなくても口にできる、祖母だけの方法だったのだと思う。

祖母も、今はもういない。そして、思ってもみなかったことがある——今、それを抱えているのは私だ。会ったこともない一人の女性が、祖母が語った、本当は存在しなかったはずの山の物語によって、今も覚えられている。それは、少しも嘘には感じられない。

だから、書き残すことにした。山が見ているからではない。今、この鎖の最後の一つを持っているのが私で、誰か一人が続けるのをやめた瞬間に、鎖は切れてしまうから。

2026/9/4
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